2025.08.13
2025.08.15 更新

JIS規格とは?研究環境を支えるJIS規格の役割と具体例

日本の製品やサービスが世界的に高い評価を受けている背景には、確かな品質管理と技術基準の存在があります。その代表的なものが「JIS規格(日本産業規格)」です。

しかし、名前は聞いたことがあっても、JIS規格が実際にどのような役割を果たし、どのように活用されているのかについては、あまり知られていません。

このコラムでは、私たちの身の回りから産業の現場まで幅広く関わるJIS規格の中でも、研究環境におけるJIS規格に焦点を当てて解説します。

JIS規格がどのように研究環境の安全性や信頼性を支えているのか、そして私たちオリエンタル技研工業が準拠している具体的なJIS規格の事例を通じて、その役割を紹介します。

JIS規格とは

JISとは “Japanese Industrial Standards” の略称で、直訳すると「日本工業規格」を意味します。

かつてはこの名称が用いられていましたが、2019年に「日本産業規格」へと改称され、より広い産業分野を対象とするようになりました。

JISは、製品やサービスに関する国家標準規格として、経済産業省によって定められています。

対象は産業用品にとどまらず、データやサービスの品質、試験方法、性能基準など多岐にわたります。

JISに準拠した製品・サービスは、日本国内で信頼性の高い基準を満たしていることの証明となり、利用者にとっての安心や安全、企業間の共通理解のもとでの取引促進にもつながります。

(※)参考:経済産業省:最新のJIS情報

JIS規格の目的

JIS規格の主な目的は、商品やサービスの「標準化」を図ることです。

世の中には多くのメーカーがさまざまな製品を開発していますが、もし各社が共通の基準なしに自由に設計・製造を行えば、互換性のない製品があふれ、私たちの生活は不便になってしまいます。

たとえば、JIS規格(JISP4501)ではトイレットペーパーのロール直径を120mm以下と定めています。

これにより、メーカーごとにサイズがバラバラになってホルダーに収まらないといったトラブルを防ぐことができます。

このように、JIS規格は製品間の互換性を確保することで利便性を高めるだけでなく、製品の安全性や品質の担保にもつながります。

また、購入者や利用者にとっての安心材料ともなり、信頼できる選択基準としての役割も果たしています。

オリエンタル技研工業の準拠しているJIS規格の例

私たちオリエンタル技研工業も、研究設備製品を販売するメーカーとして、JISをはじめとする様々な基準に準じて開発を行っています。

ここでは、当社が対応しているJIS規格の中から、代表的な3つの例をご紹介します。

JIS K3800:バイオハザード対策用クラスⅡキャビネット

JIS K3800は、バイオハザード対策用クラスⅡキャビネットの性能、構造、材料、および試験方法を規定する日本産業規格です。

安全キャビネットは、病原体などを扱う際に作業者、環境、試料の安全を確保するための重要な設備であり、JISK3800は特にクラスⅡキャビネットの規格として、安全性の確保に不可欠です。

この規格に適合した安全キャビネットは、定期的な点検も義務付けられています。

オリエンタル技研工業が販売する安全キャビネット「Tangerine」は、このJISK3800に準拠した確かな性能を有しています。

JIS K6902:熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法

JIS K6902は、実験台などに使用される天板の試験方法を基準化したものです。試験方法は以下の順番で行います。

・各汚染材料を各2枚の試験片の化粧面に滴下又は付着させ、1枚の試験片はそのままで、残り1枚の試験片はガラスカバーで覆い24時間放置する。

・次に2枚の試験片を適切な湿潤剤を含む水で洗い、更にメタノール又はエタノールで洗い、乾燥した清浄なガーゼでぬぐってから1時間放置する。

・これらの試験片の化粧面を標準光の明るさ800~1,100lxの下で、ほぼ真上から目視によって観察して、その化粧面の変化の有無を調べる。

上記の手順で検査した薬品の一覧と結果は以下の通りです。

化学薬品名

カバーあり

カバーなし

塩酸 37

変化なし

変化なし

硝酸 60

変化なし

変化なし

ギ酸 50

変化なし

変化なし

酢酸 60

変化なし

変化なし

硫酸 98

変化なし

変化なし

フッ化水素酸 50%水溶液

軽微な変化

変化なし

四塩化炭素 99.5%以上

変化なし

変化なし

アセトン 99.5%以上

変化なし

変化なし

メタノール 99.8%以上

変化なし

変化なし

酢酸エチル 99.5%以上

変化なし

変化なし

過酸化水素 30

変化なし

変化なし

塩化亜鉛 81

変化なし

変化なし

過マンガン酸カリウム 0.02mol/L 水溶液

変化なし

変化なし

次亜塩素酸ナトリウム 8% 水溶液

変化なし

変化なし

硝酸銀 0.1mol/L 水溶液

変化なし

変化なし

ホルムアルデヒド液 37

変化なし

変化なし

【判定基準】

・変化なし:表面の色調及び組織の変化が認められないもの。
・軽微な変化:表面に汚染は残るが,家庭用クレンザー又はこれと同等の洗剤で化粧面をきず付けることなく容易に除去できるもの。
・強い変化:表面が安易に除去できない状態に汚染されるか、又は侵食されているもの。

オリエンタル技研工業が取り扱う実験台用天板「ケムサーフ」は、このようなJISの定める方法に準じた試験において、優れた耐薬品性が証明されています。 PRODUCT ALBUM『実験代用天板』

JIS B9920:クリーンルームの空気清浄度の評価方法

日本では、1989年に「JIS B9920クリーンルームの空気清浄度の評価方法」が定められ、2002年に改定されました。

クリーンルームの粒子濃度測定方法、清浄度の評価方法が明確となり、「工業用クリーンルーム」の基準が確立しています。

現在清浄度のクラス表示にてISO/JISが使用されています。

また、バイオクリーンルーム(BCR)では、微生物の制御を目的として、空気の清浄度の他に落下菌に対する規定が決められています。

【各規格の対応表】

JIS B 99202002年)

≥0.1μm

≥0.2μm

≥0.3μm

≥0.5μm

≥1μm

≥5μm

JIS クラス1

10

2

JIS クラス2

100

24

10

4

JIS クラス3

1,000

237

102

35

8

JIS クラス4

10,000

2,370

1,020

352

83

JIS クラス5

100,000

23,700

10,200

3,520

832

29

JIS クラス6

1.0×10⁶

237,000

102,000

35,200

8,320

293

JIS クラス7

3.52×10⁵

83,200

2,930

JIS クラス8

3.52×10⁶

8.32×10⁵

29,300

JIS クラス9

3.52×10⁷

8.32×10⁶

2.93×10⁵

オリエンタル技研工業では、これらの基準に準拠したクリーンルームの設計に対応しています。
PRODUCT ALBUM『クリーンルーム』

ISOとの関連性

ISOとは、スイスに本部を置く国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことで、世界共通のルールや基準を定める国際規格を策定しています。

代表的なものだと、品質マネジメントシステムのISO9001、環境マネジメントシステムのISO14001、情報マネジメントシステムのISO27001などがあり、世界中の企業や団体で採用されています。

JIS規格と比較すると、ISOはより広範で国際的な規模を持つ規格です。

しかし、JIS規格はISOだけでなく、ISOではカバーされない電気・電子技術分野を扱う国際規格機関IEC(国際電気標準会議)の規格も基にしており、国際的な標準と密接に連携して策定されています。

例えばオリエンタル技研工業の性能検証システムは、ISO9001・ISO14001はもちろん、EN14175(ヨーロッパ)規格、ANSI/ASHRAE110(米国)規格など、さまざまな国際規格にも対応しています。

このように当社では、JIS規格だけでなく、ISOを含む複数の国際的な基準に対応した製品開発を行い、より高い品質と信頼性の確保に取り組んでいます。

研究環境にはJIS規格の準拠が必要不可欠

JIS規格は、日本の製品やサービスの品質を支える国家標準です。

製品・サービスの標準化を促し、私たちに安心感を与えています。

今回はJIS規格の概要と、オリエンタル技研工業が準拠するJIS規格の具体例をご紹介しました。

JIS規格への理解を深め、今後の製品選びの参考にしていただければ幸いです。

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