2025.12.03
2025.12.08 更新

プッシュプル型換気装置とは?代表的な種類と主な用途をチェック

有害物質が発生する工場や研究施設では、有害物質を排出して作業者を守る対策を取る必要があります。特に屋内で有機溶剤や特化物を取り扱う場合は、局所排気装置等の設置が義務付けられています。

作業者の安全を守る装置の中でも、本コラムではプッシュプル型換気装置についてご紹介します。

プッシュプル型排気装置がどのような装置なのか、他の局所排気装置とは何が違うのかなど、装置の概要や種類などを詳しく解説します。

プッシュプル型換気装置とは

プッシュプル型換気装置は、空気を送り込む送風装置と、汚れた空気を吸って排出する排気装置がペアになった換気装置です。

この2つの装置が向かい合う形で設置されることで、間に一定方向の空気の流れを作り出します。空気を押して(プッシュ)送り出し、引いて(プル)排出することから、「プッシュプル型換気装置」と呼ばれています。

この装置は、局所排気装置と並んで、有害物質の発散防止に用いられることが法律で定められています。設置や主要な変更を行う際は、労働基準監督署への届け出が必要です。

また、有機溶剤や特定化学物質などの規制対象業務で使用する場合は、月1回の点検と年1回以上の自主検査が義務づけられています。

空気を誘導する機能があるため、発生した有害物質を含む気体を効率よく誘導できます。

広範囲にわたって有害な気体が発生するような現場に適しており、自動車や鉄鋼の塗装、溶接、研磨作業などで重宝されています。

有害物質の排気方法には、局所排気や全体換気などがあります。発生する有害物質の特徴や作業内容に応じて、最適な装置を選ぶことが重要です。

参考文献:厚生労働省『開放式プッシュプル型換気装置の構造と性能について』[PDF]

プッシュプル型換気装置の種類

大きく分けて開放式と密閉式の2つの種類に分類されます。それぞれの特徴と違いを詳しく解説します。

開放式

開放式の場合は、広い屋内の一部分でプッシュプルの気流を作り出す方式で、囲いがないタイプのことをいいます。

空気の送り出しから吸引までの間に密閉構造がないことから、空気の流れを防ぐような障害物がある場合は、うまく換気できないことがある点に注意が必要です。

開放式にもいくつかの種類があり、たとえば全身を気流で覆う大型のものもあれば、手元だけに気流を作る作業台タイプの装置があります。

設置目的や、十分な設置スペースが取れるかどうかを基準にして選定しましょう。

密閉式

密閉式は、作業エリア全体を壁やキャビンブースで囲うことで、排気箇所以外の空気の出口を塞ぎ、空気の流れを作って有害物質を排出する方法です。

室外には拡散しにくいものの、作業場全体を覆う設備なので大型化しやすく、導入コストも高くなりやすいです。

有害物質の吸引力が高まるため、確実に吸引しなければならない物質を取り扱うような場合は密閉式が向いています。

プッシュプル型排気フード

ここまでご紹介したプッシュプル型換気装置は、プッシュフードとプルフードで作業場自体を挟む形に設置して気流を形成するため、大掛かりになりやすい装置でした。

しかし、密閉式の一種として、よりコンパクトで局所的な換気に特化したプッシュプル型排気フードも存在します。

オリエンタル技研工業が取り扱う「低風量型ヒュームフード」は、プッシュプル型換気装置の特性を応用した「密閉式・送風機なし」の製品です。

ヒュームフード(ドラフトチャンバー)型のため、低風量で局所的に高い封じ込め性能を実現します。

オリエンタル技研工業の低風量型ヒュームフードは、独自の気流制御技術を採用しています。

作業面やキャビネット内部の壁面付近にガスが停滞しやすく、逆流を引き起こし、封じ込め性能を大きく低下させる課題を解決しました。

必要な風量が小さいためランニングコストの削減も実現できます。

プッシュプル型換気装置の主な用途

プッシュプル型換気装置の主な用途は、工場や作業場、研究室などで発生した有害物質を含む空気の換気です。

空気を押し出す送風フードと、吸い込む排気フードを組み合わせることで、意図的に空気の流れを作り、有害物質を効率よく集めて排出します。

特に、塗装ブースでの使用例が多く見られます。強い乱流を生じる排気方式では、確実に有害物資を封じ込めるために風量が大きくなりがちなので、塗装や溶接の仕上がりに悪影響を及ぼす可能性があります。

一方、プッシュプル型換気装置は少ない風量で高い換気効率を実現するため、このような懸念がありません。

その他、薬品槽やメッキ槽など、臭気や有毒ガスが発生する可能性がある場所でも活躍します。

プッシュプル型換気装置と局所排気装置の主な違い

似たような働きをするものとして、局所排気装置が挙げられます。

局所排気装置とは、有害物質などが発生する場所の近くに吸い込み口を設け、吸引することで有害物質の拡散を防ぐ装置です。

以下のような違いがあります。

労基対応の性能要件

労基対応のためには、厚生労働省によって認められている基準を満たした装置を導入しなければなりません。

プッシュプル型換気装置と局所排気装置では、求められる作業点での制御風速が異なります。

まず、プッシュプル型換気装置の場合は、有機溶剤、特定化学物質、粉じんのどれに該当する場合も、平均風速が0.2m/s以上と定められています。

また、各中心点の風速が平均風速の0.5倍以上、最大風速が平均風速の1.5倍以下でなければなりません。(※1)

一方、局所排気装置については、有機溶剤の場合は囲い式フードで0.4m/s以上、特定化学物質であればガス状の場合は0.5m/s以上のように細かく定められているのも違いの一つです。(※2)

(※1)参考:(PDF)厚生労働省:開放式プッシュプル型換気装置の構造と性能について~安全に有機溶剤業務を行うために~[PDF]

(※2)参考:(PDF)厚生労働省:抑制濃度等に関する関係法令[PDF]

空気の流れ

局所排気装置の場合、発生したガスや気体などの吸収は可能ですが、プッシュプル型換気装置のように、排出したい空気を押し出して吸収部分に誘導する機能はありません。

そのため、局所排気装置については空気の流れが排気のみとなります。有害物質の発生源が限定的な場合でなければ向いていないタイプといえるでしょう。

一方、プッシュプル型換気装置については給気と排気による空気の流れが発生します。

単純に空気を吸い込んで排気する局所排気装置よりも強力に有害物質を排出しなければならないような場合でも活躍する装置です。

イニシャルコスト

イニシャルコストでいうと、高額になりやすいのはプッシュプル型換気装置です。

局所排気装置はシンプルな機能性であることからイニシャルコストを抑えられます。

ただ、どちらを導入するかについては用途によって適しているタイプが異なるので、イニシャルコストを抑えられるからという理由だけで局所排気装置を選ぶわけにもいきません。

ランニングコスト

一般的にプッシュプル型換気装置の方がランニングコストが安くなる傾向があります。

プッシュプル型は、封じ込め性能が高く、少ない風量で広範囲の有害物質を効率よく捕捉・排出できます。

これにより、ファンにかかる総風量が抑えられ、結果として電力消費が少なくなります。

一方、局所排気装置はプッシュプル型換気装置に比べて強力な吸引を行うため、有害物質の拡散を防ぎつつ広範囲をカバーしようとすると、捕捉に必要な制御風速を確保するための大きな風量が必要となり、電力消費量が増大する傾向があります。

用途に合ったタイプの製品を選びましょう

ここまで、塗装現場などで作業者の安全性を確保するプッシュプル型換気装置について詳しくご紹介しました。

装置の概要や、局所排気装置との違いをご理解いただけたかと思います。

プッシュプル型換気装置には、さまざまなタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。導入を検討される際は、ご自身の作業環境に合わせて、最適な製品を比較検討することをおすすめします。

オリエンタル技研工業株式会社では、機能性に優れた換気装置を各種取り扱っています。少ない風量で有害物質を閉じ込めることができるタイプもあり、省エネ性に優れているのが特徴です。

詳細はこちらの電子カタログをご覧ください。

当社製品の紹介ページはこちら

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