2025.08.14
2025.08.15 更新

実験台の主な種類は?使用用途や使われている素材ごとの特長

研究や開発の現場で、安全かつ効率的に実験を行うために欠かせないのが「実験台」です。

使用頻度が高く、環境に応じた適切な選定が求められる設備のひとつですが、種類や仕様もさまざまで、初めて導入を検討する際には戸惑うこともあるかもしれません。

実際、「いろいろな種類があって、どれを選べばいいのかわからない」と悩まれる方も少なくありません。

本コラムでは、そうした方に向けて、代表的な実験台の種類や素材の特徴をわかりやすく解説します。

研究内容や使用環境に合った実験台を選ぶためのヒントや、導入前に押さえておきたいポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

実験台とは

「実験台」とは、実験で使用する機器や材料、薬品などを設置するための作業台のことを指します。

主に研究室や実験室など、化学物質や試薬を取り扱う環境で使用されており、安全かつ効率的な作業を支える重要な設備のひとつです。

ここではその特徴を3つ解説します。

特徴①:優れた耐薬品性

実験台は、実験中に薬品や試薬がこぼれても溶けたり変色したりしないよう、天板に高い耐薬品性能が求められます

この耐薬品性は、一般的な作業台との大きな違いであり、安全な実験環境を維持する上で非常に重要です。

特徴②:高い耐荷重性

大型の分析機器や重い器具を設置することを想定した実験台には、耐荷重性が備わっています。

重量が重い分析機器を上に置く場合は、耐荷重性に優れた実験台を選定する必要があります。

実験の規模や使用する機器に合わせて、十分な耐荷重性能を持つ実験台を選ぶことが重要です。

特徴③:豊富な組み合わせのバリエーション

実験室の広さや用途に応じてさまざまなタイプの実験台が選択できます。

壁際に設置するサイド実験台のほか、部屋の中央に配置する中央実験台、試薬棚付き実験台、実験器具を洗浄する流し台付き実験台など、複数のタイプを組み合わせて構成することができます

実際に使用する状況を考慮し、最適なタイプを選びましょう。

実験台の色の違い

天板の色は黒が主流です。有害な薬品を扱う場合、天板が白だと薬品や液体などを見落としやすいことから、黒い天板が向いています。

一方で、たとえば化粧品関連の研究など、異物が混入した場合にすぐに発見しやすいものを選びたいときは、白色の天板がついた実験台のほうが向いていることもあります。

実験台本体の構造的な違い

実験台に備わっている機能や装置によって、それぞれ種類が異なります。

新規で実験台の導入を検討しているのであれば、まずは構造別の特徴を押さえておきましょう。

ここでは、代表的な3つの種類と、それぞれの特徴を解説していきます。

フラット型実験台

フラット型実験台とは、試薬棚は設けられておらず天板部分が平らな状態になっているタイプの実験台で、学校の理科室や実験室で使われることも多いタイプです。

実験を行う際、天板の上に大きなものを置かなければならなかったり、広いスペースを必要とする場合に向いています。

シンプルな設計が特徴なので、同程度のサイズであれば他の種類と比較して安く導入できることもあります。

また、天板がフラットなので、何か物をこぼしてしまった際はすぐに拭き取ることができ、清潔に保ちやすい点も特徴です。

ただし、試薬棚がないタイプなので、薬品などを整理する際は別途収納棚などを用意しなければなりません。

試薬棚付き実験台

取り扱う試薬の種類が多い場合に向いているのが、試薬棚付き実験台です。

備品や試薬を離れた場所に保管すると作業効率が悪くなってしまいますが、試薬棚付き実験台の場合は、天板の中央や奥側に試薬棚が設けられています。

必要なものをすぐに取り出せるようにしておけば、作業効率がアップするでしょう。

化学実験室や生物学実験室といった環境でも多く使われている種類であり、理工科系大学の化学実験・生物学実験でも活躍します。

ただ、フラット型実験台とは異なり、天板上に試薬棚が設置されていることから、作業スペースが狭くなってしまう点に注意が必要です。

大型の機器を使った実験を行う場合には向いていないこともあります。

流し台付き実験台

実験台の側面に流し台がセットされたタイプの実験台です。

天板部分を切り抜く形で、スポットシンクが設置されているタイプもあります。

シンクが付属していることで、頻繁に排液処理をする実験や、実験容器の洗浄が必要なときに活用することができます。

実験台とシンクが離れていると、シンクまで移動するのに手間がかかるだけでなく、作業効率も悪くなります。

シンクが付属していれば、作業中に手軽に排液処理が可能です。※ただし、排液の性質によっては、廃棄物処理法や水質汚濁防止法に基づく適切な中和処理や産業廃棄物としての管理が必要になりますので注意しましょう。

先ほど紹介したシンプルなフラット型実験台と比べると、カップシンクが設置されている分、さらに作業スペースが小さくなってしまう点に注意が必要です。

また、カップシンクが設置されているため、水回りの管理を適切に行わなければなりません。

実験台下台の構造的な違い

実験台下台の構造にはいくつか種類があります。

大きく分けると、座って作業する場合に適している「フレーム構造実験台」と、立ち作業に適した「ユニット構造実験台」の2種類があります。

フレーム構造:足元解放タイプ

フレーム構造の実験台は、足元が広く開いているのが最大の特徴です。

この設計により、座って行う作業に非常に適しています。

長時間の実験や精密な作業を行う際に、足元が邪魔にならないため、快適な姿勢を保てます。

また、足元に空間があることで、様々な機器を自由に組み込んだり、後から収納ユニットを追加したりできるなど、高い汎用性があります。

例えば、冷却装置やポンプ、デスクトップPCなど、実験に必要な機器を足元に効率的に配置できます。

将来的に実験内容が変わった場合でも、柔軟に対応できるのがこのタイプの強みと言えます。

ユニット構造:足元収納タイプ

下台が全て収納スペースになっているのが最大の魅力です。

実験器具や試薬、資料など、多くのものを整理して収納したい場合に非常に役立ちます。

このユニット構造には、さらに以下の2つのタイプがあります。

ケコミタイプ

ケコミタイプは、収納面が少し奥にへこんだデザインです。

このへこみがあることで、立ち作業時につま先がぶつかりにくくなります。

フレーム構造には劣りますが、作業をする際に足元にゆとりが生まれ、椅子を実験台に近づけて作業できます。

収納力と座り作業のしやすさを両立したい場合に適しています。

フラットタイプ

フラットタイプは、足元が全面フラットの収納面になっています。

このデザインにより、収納スペースを最大限に確保できるため、最も収納力が高いのが特徴です。

大量の実験器具や大型の備品を収納する必要がある場合に最適です。

実験台本体の素材的な違い

実験台には、大きく分けて木製のものとスチール製のものがあります。

どちらが向いているかを確認したうえで導入を検討していきましょう。

木製

木製の実験台は木で作られていることもあり、自然な温かみを感じられます。

特に木目調タイプは木が持つ見た目の美しさを重視したい場合にも向いているでしょう。

また、木材は電気を通さないのも大きな特徴です。

研究において電気機器を使用する場合にも安全性を高めることにつながります。

木材ということもあり火を使う実験が中心となる場合は向いていません。

耐久性は高く、何年にも渡って使用可能です。

スチール製

水や湿気に強い特徴を持っていることから、水を扱うことが多い場合にも向いています。

耐火性にも優れていることから、高温になる実験や研究を行う場合はスチール製のものを検討してみると良いでしょう。

実験台天板の性能的な違い

実験台は天板の素材が重視されます。化学薬品を取り扱うこともあるため、耐薬品性能に注目して選びましょう。

汎用型標準天板

一般的な化学実験室や学校の理科室などの実験台には、まず基本性能として高い耐薬品性が求められます。

酸、アルカリ、有機溶剤といった様々な化学薬品に触れる機会が多いため、天板が腐食したり、変質したりしないことが極めて重要です。

オリエンタル技研工業は標準天板として「ケムサーフ」を採用しています。

ケムサーフは、JIS規格の定める方法に準じた試験において、優れた耐薬品性と堅牢性が証明された、実験台の標準天板です。

表面材、基材、エッジ材をそれぞれ組み合わせた天板とは異なり、隙間に汚れが溜まりにくい一体性型です。

実験台の設置環境に応じて、R加工などのさまざまなエッジ加工が可能です。

化学物質放散に関する基準であるGREENGUARDにて、最も厳しい要件が求められるGold認証を取得し、健康的な室内環境を実現することができます。

特殊用途型

実験の内容によっては、基本的な耐薬品性に加えて、さらに専門的な性能が求められる場合があります。これらが特殊用途型の天板です。

ここでは2パターンの用途に合わせた天板を解説します。

静電気防止天板

精密な電子部品を扱うクリーンルームや、引火性の高い溶剤を使用する実験室では、静電気対策が不可欠です。

静電気放電(ESD)は、デリケートな電子回路を破壊したり、可燃性ガスに引火して火災や爆発を引き起こす危険性があります。

このような環境では、静電気を安全に逃がす性能を持つ「静電気防止天板」が選ばれます。

オリエンタル技研工業は静電気防止天板として「フィサーフ」を採用しています。

この天板は特殊合成樹脂をベースに作られており、非帯電性、耐久性、耐摩耗性に優れた性能を発揮します。

精密機器や電子機器を用いる実験、静電気が発生しやすい実験に適しています。

耐熱性天板

高温のるつぼや、アルコールランプ、ガスバーナーなどを直接扱う実験環境では、極めて高い耐熱性が求められます。

汎用型の標準天板でも耐熱性は備わっていますが、高温に耐えきれず、焦げや変形、破損につながる恐れがあります。

過酷な熱負荷がかかる作業には、「セラミック(陶器)」製の天板が最適です。

セラミックは本質的に不燃性であり、数百度の高温にも耐えることができます。

また、耐熱性だけでなく耐薬品性にも非常に優れています。耐熱性要求の厳しい実験環境にも対応できる素材と言えます。

必要な設備・用途に合った実験台を選ぶことが大切

実験台を選定するときは、使用される環境や、主な用途、素材ごとにどのような特徴があるのかを確認したうえで適したものを選んでいきましょう。

特に試薬棚やカップシンクは後から設置するのが難しいケースもあるので、設計段階での確認が必要です。

オリエンタル技研工業では、さまざまな型式の実験台を取り扱っているだけでなく、どの実験台が適しているかのご提案も可能です。

実験台選びで心配な場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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