2022.01.11

ドラフトチャンバー(ヒュームフード)とは?安全キャビネットとの違いを解説

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ドラフトチャンバーとは、化学実験などで発生する有害ガスを屋外に排気することで作業者を保護する局所排気装置の1種です。日本国内での呼称は、ドラフト、ドラフト装置、俗にドラチャンなどがあります。対して、海外では Fume Hood または Fume Cupboard と呼ばれており、日本国内においても国際的な環境安全教育の観点からヒュームフードと呼ばれることがあります。

安全キャビネット(バイオハザード対策用キャビネット)とは、微生物・病原体などのバイオハザードから作業者を保護し、室内への拡散を抑制するための設備です。病原体や遺伝子組み換え生物などを取り扱う大学や研究所、医療機関の検査室などで使用されています。

ドラフトチャンバー(ヒュームフード)と安全キャビネットの違い

どちらも「フード」と呼ばれることもありますが、安全キャビネット(バイオハザード対策用キャビネット)とドラフトチャンバーは、まったく異なる機能を持った設備です。
どちらも実験に付随するリスクを封じ込めるように設計されていますが、保護する対象、気流、およびアプリケーションの点で異なります。ドラフトチャンバーは、庫内で取り扱われる有害ガスを屋外に排気することで作業者と室内循環の保護を目的とする換気設備です。それに対しライフサイエンス分野で使用される安全キャビネットは、HEPAフィルターと指向性気流を利用して、環境、作業者、試料の保護を目的としています。
どちらも、作業者を保護するという点では同じですが、安全キャビネットはバクテリア、ウイルスなどの病原体・細菌等を扱う作業に適しています。
不適切な封じ込め設備を選定することは、作業者の健康、安全、および実験室(とその排気システム)の操作/機能に重大な影響を及ぼす可能性があることに注意する必要があります。特定のプロセスに基づく推奨事項については、常に安全担当者に確認していただくことを推奨します。
ここからは保護の対象、気流、アプリケーション、タイプの観点からドラフトチャンバーと安全キャビネットの違いについて詳しく解説していきます。

保護の対象

適切な換気設備を選択するための最初のステップは保護する対象を理解することです。

ドラフトチャンバー(ヒュームフード)

ドラフトチャンバーは、有害ガスから作業者と室内環境を保護することを目的としています。

安全キャビネット

安全キャビネットは、環境、作業員、および試料を浮遊粒子から保護することを目的としています。

ドラフトチャンバー(ヒュームフード)の使用に際する注意

安全かつ効率的に作業するには、空気の流れが阻害されないことが重要です。大型機器を庫内に設置するなど、空気の流れを阻害するようなことは避けるべきです。どうしても必要な場合は、規定の開口風速が維持できるように設置してください。また、使用時には、決して頭を庫内に入れず、サッシは未使用時には閉じるようしてください。

安全キャビネットの使用に際する注意

室内循環タイプであるクラスⅠやクラスⅡタイプAについては、HEPAフィルターで捕集されない物質(有害ガスや臭気など)は室内にもどってしまうため、注意が必要です。

気流

気流は封じ込め設備の性能を決定付ける最も重要な要素のひとつです。気流の観点におけるドラフトチャンバーと安全キャビネットの違いは以下の通りです。

ドラフトチャンバー(ヒュームフード)

ドラフトチャンバーは作業者が有害ガスに曝露しないように、前面開口部より室内の空気を吸い込みます。空気は開口部を通り、作業面を通過し、装置上部からダクトを通り抜け、屋外に排出されます。

安全キャビネット

安全キャビネットは、3つのクラスに分類されますが、それらすべてに共通の点が1つあります。それは、有害なエアロゾル/微粒子から作業者の安全を確保する点です。

  • クラスI安全キャビネットは、前面開口部から空気を吸込み、HEPAフィルターを通過して、実験室に循環排気されるか、屋外に排気されます。
  • クラスII安全キャビネットでは、室内の空気を吸い込み、清浄化された空気が作業エリアに吹き出され、HEPAフィルターを通って排気空気は室内に再循環、もしくは屋外に排気されます。
  • クラスIII安全キャビネットは、危険な作業を封じ込めるために完全な物理的バリアを利用する設備です。空気は単一のHEPAフィルターを通って入り、屋外に向かう途中でHEPAフィルターを通過して排出されます。

ヒュームフード(ドラフトチャンバー)
イェール大学
安全キャビネット
ネブラスカ大学リンカーン校
ヒュームフード(ドラフトチャンバー)
イェール大学


安全キャビネット
ネブラスカ大学リンカーン校

アプリケーション

ドラフトチャンバーと安全キャビネットでは対象とするアプリケーションが異なります。

ドラフトチャンバー

ドラフトチャンバーは、主に下記の物質を用いるアプリケーションに対して使用されます。

  • 臭気性物質
  • 有害ガス
  • 反応性物質
  • 飛散する可能性のある化学物質
  • 発がん性物質
  • 可燃性物質
  • その他の有害で揮発性の物質

安全キャビネット

安全キャビネットは、主に感染性微生物または大腸菌等の遺伝子組み換え微生物を用いるアプリケーションに対して使用されます。安全キャビネットのタイプに応じて、BSL(バイオセーフティレベル) 1、2、または3 [P1~P3レベル]の封じ込めレベルが必要となる試料が使用されます。

タイプ

ドラフトチャンバー・安全キャビネットともに様々なタイプがあり、それぞれの特徴を理解し、アプリケーションや設置環境に応じて使い分けることが重要です。

ドラフトチャンバー

定量排気方式のドラフトチャンバーが最も一般的です。エアカーテン式、高封じ込め型(低風量型)なども、すべて定量排気方式のドラフトチャンバーに含まれます。
サッシ開度によって風量を変動させるVAV(排気量可変)方式は、定量排気方式よりも、エネルギー効率に優れています。室内循環型のダクトレスヒュームフードは、屋外に空気を排出しないため、排気を補うための給気を行う必要がなく、最もエネルギー効率に優れています。その他のタイプとして、過塩素酸の取扱いに適した耐酸性材質で構成されているものなど、特定のアプリケーションに特化したタイプも存在します。

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安全キャビット

クラスI安全キャビネットは前面開口部があり、陰圧運転による作業者の保護のみを目的としています。最も一般的なタイプであるクラスII安全キャビネットは、タイプA、B、Cの3つに分類されます。クラスIIタイプAの安全キャビネットは室内に空気を再循環させます。ただし、アプリケーションに(臭気物質を扱うなど)に応じてキャノピー接続により屋外排気を行う場合もあります。クラスIIタイプA1とA2は類似していますが、最小平均流入風速の必要要件が異なります。タイプA安全キャビネットでは、放射性核種や危険な化学物質は使用できません。
クラスIIタイプBは専用排気システムに接続されます。タイプBは、危険な化学物質(リスクアセスメントにもとづき、庫内で取扱う必要がある場合)の使用に適しています。タイプB1 は排気空気の一部を室内に再循環するのに対し、タイプB2は完全に屋外排気されます。
クラスIIタイプCは、タイプAとBのハイブリッド型であり、室内循環/屋外排気を切り替えることができます。タイプC1はその柔軟性により、有害化学物質を使用する、また使用しない作業のどちらにも適しています。庫内を直接排気エリアと室内循環エリアに分けることで、微生物、微粒子、化学物質の封じ込めを維持しつつ、エネルギー消費の抑制を可能としています。

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クラスⅢ安全キャビネットは完全に密閉されたグローブボックスタイプです。

その他のタイプの換気装置

目的の操作に適した装置を慎重に選択する必要があります。適切な装置を使用することは作業員と実験室の安全にとって重要です。また、実験の成果にとっても重要となります。その他の装置としては、グローブボックス、クリーンベンチ、バランスエンクロージャーなどが挙げられます。ナノ粒子を使用するアプリケーションでは、特定の要求事項を満たすように設計された装置も存在します。
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*本記事はLabconco Corporation.による記事をもとに作成したものであり、日本国内での法規・基準などと異なる場合があります。原文はこちらよりご確認ください。

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