安全キャビネットで安全に火を用いるには

4 reasons not to use open flames in BSCs / Best practices if a flame is needed

クラスIIの安全キャビネット(バイオハザード対策用キャビネット)は、HEPAフィルターでろ過された層流(均一)の気流を利用して、作業者、環境、および試料を保護する。感染性微生物からの保護という目的から、HEPAフィルターは通常粒径0.3μmの粒子に対して99.99%以上*の集塵効率が求められる。
 
微生物学における実験では、殺菌のため、および相互汚染のリスクを減らすために、ブンゼンバーナーまたは直火を用いることがよくある。しかし、いくつかの理由から、安全キャビネットで直火を使用することは推奨されない。
 
* 日本産業規格(JIS)においては、HEPAフィルターは「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもつ」ことと定義されている。

写真1:焦げたHEPAフィルター

写真2:焼損した安全キャビネット

安全キャビネットで直火を使用すべきではない4つの理由

 

  1. クラスⅡの安全キャビネットは、作業エリアに下向きの層流気流を供給することで、試料を保護する。熱気は上昇するため、直火は層流気流に逆らって空気を上昇させる。これが乱流を発生させ、作業エリアの試料を保護する安全キャビネットの性能を阻害する。

  2. 直火が過度に高温になると、HEPAフィルターのろ材を枠に固定している接着剤を溶かす可能性がある。これはフィルターの性能を棄損し、陽圧状態のプレナムが封じ込め性能を失う原因となる。

  3. 火が消えてもガスの供給バルブが開いたままであれば、可燃性ガスが安全キャビネットに充満してしまう。庫内の空気の70%までが再循環するタイプA2では、可燃性ガスが爆発につながる濃度に達する危険性がある。これは安全キャビネットだけでなく、作業者や実験室に対しても非常に危険な状況である。

  4. アメリカ疾病予防管理センター(CDC)とアメリカ国立衛生研究所(NIH)も出版物の中でこれについて取り上げている。
    (参考:Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories, 5th ed. (BMBL 5th)

安全キャビネットで作業する際は、試料が相互に汚染する可能性を減らすために、いくつかの対策を講じることができる。開いたチューブやボトルを垂直にして保持してはならない。ペトリ皿や細胞培養プレートを扱う作業者は、開いた無菌面の上に蓋を保持し、庫内の層流気流に影響されないよう留意するべきだ。ボトルやチューブの蓋は積み重ねて置いてはならない。用具はできるだけ早く蓋をするか、カバーで覆う必要がある。
安全キャビネット庫内に微生物がほとんど存在しないならば、直火は必要ない。通常の実験台上では、培養容器の首に火を近づけると上昇気流が生じるため、微生物がチューブやフラスコ内に流入することを防ぐことができる。しかし、安全キャビネット内で直火を用いると、HEPAフィルターでろ過されて作業面に供給される空気に乱流を発生させる。どうしても必要な場合は、点火灯が付いたタッチプレート式の小型バーナーを使用することができる。これは必要に応じて火を供給するため、庫内の気流を阻害すること、および熱がこもることを防げる。作業が完了したらバーナーは消さなければならない。小さな電気「炉」は白金耳や針を除染するために利用でき、安全キャビネットの中で直火を用いるより好ましい選択だ。可能な限り、使い捨てまたはリサイクルができる白金耳を使用する必要がある。


 

火を用いる最善の手法

アメリカ疾病予防管理センターによって概説されているように、火が絶対に必要である場合は、ブンゼンバーナーに代わる、より安全で広く利用可能な機器がある。それは、動作を検知するものや、火がペダルで調整できるものである。
 

Good

必要に応じて、「安全な」バーナーを利用することで、安全キャビネットへの直火による影響を最小限に抑えられる。ほとんどのバーナーには、使用していないときにバルブを閉じて余分なガスを燃焼させる制御バルブとパイロットライトが付いている。多くは手を使わず、動作の検知またはフットペダルで操作できる。
 

Better

環境には優しくないが、使い捨てのプラスチック製白金耳や実験器具は、安全キャビネットでの使用に適している。オートクレーブが利用できれば、直火の使用より良い選択肢として考慮してほしい。
 

Best

電気式の殺菌器具は最良の代替案だ。電気式の殺菌器具は、飛沫やエアロゾルの発生を防ぎながら、相互汚染の対策にもなり、白金耳、針、培養チューブを安全に殺菌することができる。セラミック製チューブは、ガスを必要としない高温殺菌にも対応可能な耐熱性を有している。

 

*本記事はLabconco Corporation.による記事を要約したものであり、日本国内での法規・基準などと異なる場合があります。原文はこちらよりご確認ください

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