新型コロナウイルス (SARS-CoV-2 / COVID-19)の取扱い時における安全対策

Laboratory Biosafety Recommendations for SARS-CoV-2 and COVID-19

By David Wasescha, Product Marketing Manager, Labconco

現在世界中で蔓延している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を阻止することは医療従事者や検査機関にとって、大きな課題となっている。COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は新しいウイルスであるが、米国疾病予防管理センター(CDC)および世界保健機関(WHO)による暫定ガイドラインは、臨床および研究段階におけるサンプルの安全な取扱いに関する疑問に答えている。このガイドラインに従うことにより、研究員やその他の人々へのリスクを大幅に低減することが期待される。
 
ここでは、CDCおよびWHOの暫定ガイドラインが示す情報から、特に考慮すべき事項を抜粋して紹介する。
 

Q: COVID-19サンプルを受け取る前に、実験室ではどのような準備が必要なのか?

A: COVID-19サンプルを受け取る前に、施設の安全衛生責任者にガイダンスを求める。さらにCDCとWHOはどちらもその施設・研究内容を考慮して、固有のリスクアセスメントを実施することを推奨している。SARS-CoV-2は新しいウイルスであるが、他の病原性ウイルスと類似している点もある。そのため、既存のBSL実験室などに若干の手を加えることで、COVID-19サンプルを適切に取り扱う環境を構築できる場合もある。
  

Q: COVID-19の疑いのあるサンプルを取り扱う実験室には、どのバイオセーフティーレベル(BSL)が推奨されるのか?

A:CDCは、呼吸器検体、血液(および血液成分) 、尿などの患者のサンプルを扱う臨床検査室は、BSL2 [P2レベル]施設内で標準予防策を実践することを推奨している。さらに、全長ゲノムRNAを含む作業もBSL2で行う必要があるとしている。
標準予防策:https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/isolation/index.html#5
 
高濃度の生ウイルス(増殖や分離など)を伴う活動、または大量の感染性サンプルは、BSL3 [P3レベル]環境以上で取り扱う必要があるとしている。
各バイオセーフティレベルの要件のリストはhttps://www.cdc.gov/labs/BMBL.html を参照されたい。
 

Q: COVID-19サンプルを取り扱うには、どのようなタイプの設備が必要か?

A: CDCとWHOは現在、攪拌、ピペット作業、遠心分離、またはその他の作業の結果としてエアロゾルまたは飛沫が発生する可能性がある場合は常に、クラスII安全キャビネットを使用することを推奨している。クラスII安全キャビネットは、「作業者保護(研究員)」、「試料保護(サンプル)」、および「環境保護(実験室)」の3つを実現することができる設備として、COVID-19サンプルの取扱いに対応する。 クラスII安全キャビネット内の HEPAフィルターで処理されたクリーン度ISOクラス5相当の層状気流パターンによりRT-PCRを使用したCOVID-19サンプルの分析に適切な環境を実現する。クラスIIタイプA2またはタイプC1の安全キャビネットが適しており、外部排気に関する要件はない。クラスIIタイプB2の安全キャビネットは、構造上屋外に排気する必要があるが、B2タイプでもサンプルの取扱いは可能である。
 
注:COVID-19サンプルの処理(またはその他の用途)に使用するクラスII安全キャビネットは、使用する前に適切な性能試験を実施する必要がある。
  

Q: SARS-CoV-2に対して使用が推奨される実験室用除染剤は何か?

A: 現在、CDCは、環境保護庁(EPA)のリストNで承認された除染剤を使用することを推奨しており、そのすべてについてSARS-CoV-2に対する使用を承認している。リストに記載のある多くの除染剤には、過酸化水素、アルコール、漂白剤、または第4級アンモニウム成分が含まれている。 SARS-CoV-2に対する特定の薬剤の適合性が不明な場合は、除染剤の製造元に確認するべきである。
  

Q: SARS-CoV-2ウイルスとCOVID-19サンプルを扱う実験室では、どのようなリソースやガイダンスを利用できるか?

A: 以下のサイトに参考となる情報が数多く掲載されている:

 

参照



*本記事はLabconco Corporation.による記事を要約したものであり、日本国内での法規・基準などと異なる場合があります。原文はこちらよりご確認ください
 


日本では、国立感染症研究所「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」において、以下のような指針が公表されています:

  1. 検体の取り扱いは、バイオセイフティーレベル(BSL)2+でおこなう。BSL2[P2レベル]実験施設内 の安全キャビネット内で取り扱い、操作中はディスポーザブルのガウン、手袋(2 重)マスク (サージカルマスクでよい)、キャップ等の personal protective equipment (PPE)を着用す る。チューブの蓋を開ける時には遠心し、チューブオープナーなどを用い、エアロゾルの 発生を極力防止する。
  2. 実験室内遺伝子コンタミネーション防止とRNaseの混入防止に細心の注意を払う。コンタミネーション防止には、試薬調製場所とPCR産物などサンプルを扱う場所を物理的に分けることが望ましい。できない場合は、それぞれの操作を別々のキャビネット内で行う。

と記載されています。
 
また、感染症法上における病原体の分類としては、「四種病原体」に分類する方向で検討していると報じられています。(2020年3月10日 東京新聞 夕刊) 

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