2022.10.14

ヒュームフード(ドラフトチャンバー)は構造によってルールが異なる?

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法規面で見る封じ込め設備の比較

研究者を有害ガス・粉塵などから保護するヒュームフード(ドラフトチャンバー)をはじめとした封じ込め設備。
有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)等の安全衛生関係法令により、これら封じ込め設備は構造から「局所排気装置」「プッシュプル型換気装置」「発散防止抑制措置」等に分類されており、これらの分類に応じて規定される性能要件や届出方式、定期点検内容も異なります。

本コラムでは当社の扱う「ヒュームフード」「ダクトレスヒュームフード」が法規上どのように分類されるか、比較しながらご紹介します。

法規面で見る封じ込め設備の比較

分類別比較表

「局所排気装置」「プッシュプル型換気装置」「発散防止抑制措置」の3種類を比較します。
このうち局所排気装置・プッシュプル型換気装置は密閉設備(グローブボックス等)と併せて「局所排気装置等(局排等)」と総称されます。

封じ込め設備比較表
法規上の区分 局所排気装置 プッシュプル型換気装置 発散防止抑制措置
概要 有害物の発散源に近いところにフードを設けて、有害物を吸込み、ダクトを通して屋外に排気する装置 一様な捕捉気流を形成させ、吸込み側にー度に取り込んで排出する装置 有害物質の発散を防止・抑制する装置で局排等以外の物
フード内で使用できる物質 有機溶剤
特定化学物質 等
※物質や作業内容に応じて、装置材質や排ガス洗浄装置等の選定が必要です。
有機溶剤
特定化学物質 等
※物質や作業内容に応じて、装置材質や排ガス洗浄装置等の選定が必要です。
第2種有機溶剤
特定化学物質第2類物質 等
※労働基準監督署への許可申請が必要です。
構造要件 【主な要件】
・フードは発散源ごとに設置
・スクラバーを付設する場合、原則スクラバーの2次側にファンを設置
・排気口は屋外に設置
・風速規定(もしくは抑制濃度規定)を満たす事
【主な要件】
・スクラバーを付設する場合、原則スクラバーの2次側にファンを設置
・排気口は屋外に設置
・風速規定を満たす事
・フィルターが2層以上
・申請物質を検知するためのセンサー等の具備
・センサー等は管理濃度の1/10以下を検出する性能を有すること
・上流側のフィルターが破過した場合、破過したことを伝達できる性能を有すること
・保守/点検ルールが定められ、責任者等の管理体制が明らかにされていること
制御風速 【囲い式の場合】
0.4m/s 有機則
0.5m/s 特化則(ガス状)
1.0m/s 特化則(粒子状)
平均風速:0.2m/s以上
風速平均値と各測定値のズレ:±50%以内
規定なし
届出・申請 設置前に届出義務:機械等設置届 設置前に届出義務:機械等設置届 設置後に「特例実施許可申請」
第2種有機溶剤や第2種特定化学物質を使用する場合
点検義務・項目 定期自主検査(1年以内ごとに1回)
月次点検(作業主任者を選任している場合)
定期自主検査(1年以内ごとに1回)
月次点検(作業主任者を選任している場合)
規定なし
ただし、許可基準に点検ルールの制定があるため、実質定期的な点検が必要です。
代表的な封じ込め設備 ヒュームフード
標準タイプヒュームフード
高封じ込めヒュームフード
高封じ込めヒュームフード
ダクトレスヒュームフード
ダクトレスヒュームフード
特徴 大風量で排気するため、加熱、乾燥作業など、有害物質が多量揮発、飛散する可能性のある作業へも対応できる 総排気風量の低減により空調負荷を抑制 室内循環排気により空調負荷を大きく抑制

局所排気装置

局所排気装置とは、有害物の発散源に近いところにフードを設けて、有害物を吸込み、ダクトを通して屋外に排気する装置を指します。

類型

局所排気装置には以下のような種類があり、当社の「ヒュームフード(標準タイプ)」は囲い式フードの局所排気装置に区分されます。

局所排気装置の種類
特徴
囲い式 ヒュームフード
(ドラフトチャンバー)
開口面の大きさは通常、手を差し込んで作業できる程度で、化学実験室で使われるドラフトチャンバーが代表的なもの。
グローブボックス 中に両手を差し込んで作業するための箱で、前面上部がガラス張りで中が見え、前面下部に手を差し込む孔が空いている。
外付け式 スロット メッキ槽や作業台の端に設けた細長い開口を有するもの。
ルーバー 発散源の傍らに設けた、すだれ又はよろい戸状の開口を有するもの。
レシーバー
(キャノピー)
発散源の上方に天蓋のように吊るされた自立フード。熱浮力による上昇気流を伴う発散源に用いる。

性能要件

性能要件としては制御風速が定められており、ヒュームフードに区分される囲い式フードでは
・有機則対象物質:0.4m/s
・特化則対象物質:0.5m/s(ガス状)/1.0m/s(粒子状)
と規定されています。

届出と検査

局所排気装置は設置・移設・変更工事開始の30日以上前までに所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。
設置後は1年以内ごとに1回、定期自主検査を行う必要があります。

特徴

局所排気装置に分類されるヒュームフード(標準タイプ)は大風量で排気するため、加熱、乾燥作業など、有害物質が多量揮発、飛散する可能性のある作業へも対応できます。
その一方で空調負荷が重く、ランニングコストも大きくなります。

プッシュプル型換気装置

プッシュプル型換気装置は封じ込め設備のひとつで、吹出し(プッシュ)気流と吸込み(プル)気流で捕捉気流を形成することで、有害物質をより効率的に封じ込めることができる設備です。

類型

プッシュプル型換気装置は構造により、以下のように分類されます。
当社の高封じ込め(低風量型)ヒュームフードは、「密閉式・送風機なし」のプッシュプル型換気装置に該当します。

プッシュプル型換気装置の分類

性能要件

密閉式プッシュプル型換気装置の構造要件・性能要件は、以下のように定められています。

構造要件
  1. ブースはフード開口部を除き密閉されていること
  2. 排風機によりブース内の空気を吸引し、当該空気がダクトを通し排気口から排出されるものであること
  3. ブース内部に下向きの気流を発生させている、吸込み側フードを発散源にできるだけ近い位置に設置するなど、有機溶剤の蒸気を作業者が吸入するおそれのない構造とすること
性能要件
  1. 捕捉面における風速の平均値が0.2m/s以上であること
  2. 捕捉面の各点における風速が、当該風速の平均値に対し±50%の値であること
(『有機溶剤中毒予防規則第十六条の二の規定に基づく厚生労働大臣が定める構造及び性能』より)

届出と検査

プッシュプル型換気装置も局所排気装置と同様、設置・移設・変更工事開始の30日以上前までに所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。
設置後は1年以内ごとに1回、定期自主検査を行う必要があります。

特徴

プッシュプル型換気装置では規定されている風速が平均0.2m/s以上と、局所排気装置で定められている制御風速より抑えられています。
総排気風量も標準タイプのヒュームフード(局所排気装置)より少なく、空調負荷の抑制につながります。

発散防止抑制措置

有機則・特化則で規制された作業を行う場合には局排等の設置が義務付けられますが、作業者への健康被害を防止する代替設備を設け、行政から許可を受けた場合は局排等の設置が免除されます。
この代替措置を「発散防止抑制措置」と呼びます。

一般的な発散防止抑制措置

発散防止抑制措置として認められる一般的な措置としては、「ダクトレスヒュームフード」の設置運用があります。
ダクトレスヒュームフードとは高性能フィルターで溶剤蒸気を含んだ空気を吸着除去し室内に排気する、循環排気型のヒュームフードです。

審議許可基準

ダクトレスヒュームフードを発散防止抑制措置として所轄の労働基準監督署に申請し、特例実施許可を受けるためには以下のような審議許可基準を満たす必要があります。

  • フィルターが2層以上
  • 申請物質を検知するためのセンサー等の具備
  • センサー等は管理濃度の1/10以下を検出する性能を有すること
  • 上流側のフィルターが破過した場合、破過したことを伝達できる性能を有すること
  • 保守/点検ルールが定められ、責任者等の管理体制が明らかにされていること
基安発0713第1号(平成29年7月13日)より抜粋
※所轄労働基準監督署での審議許可条件に合致しないものは、専門家検討会にて審議されます。

申請フロー

また発散防止抑制措置の特例実施許可申請は、基本的に下記の流れで実施します。

  1. 使用する薬品等のヒアリング
  2. ヒアリングに基づく最適な装置や申請要領のご提案
  3. ご契約
  4. 製品納品
  5. 作業環境測定の実施
  6. 各種申請書類の作成
  7. 労働基準監督署への申請
  8. 許可/不許可
  9. フォローアップ

特徴

ダクトレスヒュームフードは室外に空気を排出しないため、排気を補うための給気を行う必要がありません。空調負荷が大きく抑えられ、省エネ性の向上とランニングコストの削減に寄与します。またダクト工事も不要なため、イニシャルコストも抑えられます。
その一方、フィルターで吸着除去できる物質とその量に制限があります。

省エネ型ヒュームフードで
地球環境への負荷と
運用コストを抑制

封じ込め技術・制御技術の進歩で、かつては⼤量の室内空気を屋外排気していたヒュームフードも空調負荷を抑えることが可能になりました。空調負荷の低減は研究所全体のエネルギー消費量を削減するばかりでなく、排出された有害物質による⼤気汚染のリスクを抑えることにもつながります。

使⽤される薬品の量や種類によっては、所轄の労働基準監督署の許可を得ることでダクトレスヒュームフードを発散防止抑制措置として届け出て使用することも可能です。
当社のダクトレスヒュームフード"Captair Smart"シリーズ"Green Fume Hood"は、法令で定められた技術要件をクリア。
さらに専門の担当者がダクトレスヒュームフード導入前のコンサルティングから、作業環境測定・各種申請書類の作成まで、発散防止抑制措置の特例実施許可申請をトータルにサポートします。

屋外排気方式のヒュームフードが必要となる場合でも、必要排気風量の少ない低風量型やサッシ開度によって風量を変動させるVAV(排気量可変)型を選定することで、CO2排出量の削減につながります。

排気風量

※本ページの内容は、2022年10月時点で公表されている法令等をもとに、作成しております。今後段階的に基準等が公表される場合もあるため、最新の法令等をご確認ください。理由の如何を問わず、閲覧者が法令等を誤認し生じた損害について、当社は一切責任を負わないものとします。

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